日本最多の約95万人が乗り降りするJR新宿駅。八つあるホームで流れる電車の発車メロディーは、1人の作曲家が作っている。数秒間の旋律は、多くの人の耳に自然と吸い込まれていく。作曲を担った櫻井隆仁さん(51)に、音作りの舞台裏を聞いた。(聞き手・横山輝)
――JR新宿駅に八つあるホーム、16の線路すべてで、櫻井さんの楽曲が使われています。
普段、新宿駅を使います。自分の曲とともに電車に流れ込む人を見ると、役に立てているんだなあ、と感じます。
――駅の発車メロディーを作るようになった経緯は。
大学卒業後、レコード会社に就職しました。関係があった電機メーカーが鉄道の駅に音響機器を導入することになり、ソフトにあたる「音」を私が作ることになったんです。
学生時代、通信カラオケの音源をパソコンでデータ入力するアルバイトをしていたんですが、その経験を買われたようで。作曲は、趣味でやっていた程度でした。1990年代半ばのことです。
――当時、発車メロディーは一般的だったのでしょうか。
正確にはわかりませんが、私が知っている範囲で他にはありませんでした。そもそも、その時も中身の音を「曲」にするほかに、車掌が吹く笛のような単なる「音」にすることも考えられたぐらいです。
ただ、どうせ作るなら、旋律にしようと。最初の仕事は、京都市営地下鉄でした。新宿駅で採用してもらったのは98年ごろです。
――発車メロディーを一から作るとき、どう考えるんでしょう。
発車メロディーは文字通り…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル